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1.在日米軍関係者のビザ

 在日米軍関係者については、日米地位協定により特別な取り扱いがなされます。
 ここで日米地位協定とは、正式には「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」のことをいい、新日米安保条約6条に基づいて、1960年1月19日に日本とアメリカ合衆国との間で締結された地位協定です。英文では、Agreement under Article VI of the Treaty of Mutual Cooperation and Security between Japan and the United States of America, Regarding Facilities and Areas and the Status of United States Armed Forces in Japanです。この協定は、主に在日米軍の日米間での取り扱いなどについて定められています。
 そして、在日米軍の軍人関係者の出入国及び在留等については、日米地位協定9条に規定されています。



2.日米地位協定9条(合衆国軍隊構成員等の地位)

 日米地位協定9条の内容は以下のとおりです。

1.この条の規定に従うことを条件として、合衆国は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族である者を日本国に入れることができる。

2.合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される。
 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、外国人の登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外される。ただし、日本国の領域における永久的な居所又は住所を要求する権利を取得するものとみなされない。

3.合衆国軍隊の構成員は、日本国への入国または日本国からの出国に当たって、次の文書を携帯しなければならない。
(a) 氏名、生年月日、階級及び番号、軍の区分並びに写真を掲げる身分証明書
(b) その個人又は集団が合衆国軍隊の構成員として有する地位及び命令された旅行の証明となる個別的又は集団的旅行の命令書
 合衆国軍隊の構成員は、日本国にある間の身分証明の為、前記の身分証明書を携帯していなければならない。身分証明書は、要請があるときは日本国の当局に提示しなければならない。

4.軍属、その家族及び合衆国軍隊の構成員の家族は、合衆国の当局が発給した適当な文書を携帯し、日本国への入国若しくは日本国からの出国に当たって、または日本国にある間その身分を日本国の当局が確認することができるようにしなければならない。

5.1の規定に基づいて日本国に入国した者の身分に変更があってその者がそのような入国の資格を有しなくなった場合には、合衆国の当局は、日本国の当局にその旨を通告するものとし、また、その者が日本国から退去することを日本国の当局によって要求されたときは、日本国政府の負担によらないで相当の期間内に日本国から輸送することを確保しなければならない。

6.日本国政府が合衆国軍隊の構成員若しくは軍属の日本国の領域からの送出を要請し、または合衆国軍隊の旧構成員若しくは旧軍属に対しもしくは合衆国軍隊の構成員、軍属、旧構成員若しくは旧軍属の家族に対し退去命令を出したときは、合衆国の当局は、それらの者を自国の領域内に受け入れ、その他日本国外に送出することにつき責任を負う。
 この項の規定は、日本国民でない者で合衆国軍隊の構成員若しくは軍属として、または合衆国軍隊の構成員若しくは軍属となるために日本国に入国したもの及びそれらの者の家族に対してのみ適用する。



3.日米地位協定9条の解説

(1) 9条2項第一文

 在日米軍の軍人は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から免除されます。したがって、在日米軍の軍人は、出入国及び在留に関する日本国の法令の適用をすべて免除されます。

(2) 9条2項第二文

 在日米軍の軍人、在日米軍の構成員 (アメリカ国籍を有する文民で、在日米軍に雇用され、これに勤務し、またはこれに随伴する者) 及びこれらの家族は、外国人の登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外されます。したがって、在日米軍の軍人、在日米軍の構成員及びこれらの家族は、外国人登録法及び出入国管理令のうち在留資格、在留期間等に関する規定が適用されないと解釈されています。

(3) 9条3項

 在日米軍の軍人は、日本への出入国にあたって、身分証明書及び個別的または集団的旅行命令書を携帯しなければなりません。また、日本に滞在する間は身分証明書を携帯し、要請があるときは日本側当局に提示しなければなりません。

(4) 9条4項

 在日米軍の構成員及びこれらの家族は、米国当局が発行した適当な文書(旅券)を携帯し、出入国のとき及び日本に滞在する間は、身分を日本側当局が確認することができるようにしなければなりません。

(5) 注意点

 日米地位協定の特例が適用されるのは、あくまでも在日米軍の軍人、在日米軍の構成員及びこれらの家族である場合だけです。したがって、退役等してこれらに該当しなくなったときは、通常の外国人と同様に入管法等が適用されてビザが必要になります。この場合、新規にビザを取得する必要があります。



4.日米地位協定の軍属に関する補足協定の署名

 日米地位協定第1条(b)は、「合衆国の国籍を有する文民で日本国にある合衆国軍隊に雇用され、これに勤務し、又はこれに随伴するもの(通常日本国に居住する者及び第14条1に掲げる者を除く)」を軍属と定義しています。
 ところが、「随伴するもの」の範囲は曖昧で、米側の解釈で決められていました。軍属については、公務中の犯罪は米側が優先的に裁判権を持っていました。
 しかし、2016年4月に沖縄県うるま市で発生した事件を受け、日米両政府は軍属の定義と範囲を見直し、2017年1月16日、日米地位協定の軍属に関する補足協定が署名されました。
 すなわち、軍属の定義は、
@民間業者の従業員のうち、高度な技術や知識を持ち米軍の任務に不可欠な者
A日本に在留資格を持つ居住者は軍属から除外するとし、
 また、軍属に含まれる範囲として、
@米政府に雇用され、在日米軍に勤務または米軍の監督下にある文民
A米軍が運航する船舶や航空機に乗る文民
B米政府の被雇用者で、米軍に関連する公式目的のために日本に滞在する者
C技術アドバイザーおよびコンサルタントで、在日米軍の公式招待により日本に滞在する者
 を例示しています。



5.参考資料

・ 日米地位協定の考え方・増補版 (琉球新報社編、高文研)
・ 検証地位協定・日米不平等の源流 (琉球新報社著、高文研)
・ 本当は憲法より大切な日米地位協定入門 (創元社)
日米地位協定等について(外務省)



6.主な在日米軍施設

・ 横田基地 (東京都福生市など)
・ 厚木基地 (神奈川県綾瀬市など)
・ 嘉手納基地 (沖縄県中頭郡嘉手納町など)
・ 横須賀基地 (神奈川県横須賀市)
・ 岩国基地 (山口県岩国市)
・ 佐世保基地 (長崎県佐世保市)
・ 三沢基地 (青森県三沢市)

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