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日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法 |
平成3年5月10日 法律71号
(目的)
【第1条】 この法律は、次条に規定する平和条約国籍離脱者及び平和条約国籍離脱者の子孫について、出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)の特例を定めることを目的とする。
(定義)
【第2条】 この法律において「平和条約国籍離脱者」とは、日本国との平和条約の規定に基づき同条約の最初の効力発生の日(以下「平和条約発効日」という。)において日本の国籍を離脱した者で、次の各号の一に該当するものをいう。
(1)昭和20年9月2日以前から引き続き本邦に在留する者
(2)昭和20年9月3日から平和条約発効日までの間に本邦で出生し、その後引き続き本邦に在留する者であって、その実親である父又は母が、昭和20年9月2日以前から当該出生の時(当該出生前に死亡したときは、当該死亡の時)まで引き続き本邦に在留し、かつ、次のイ又はロに該当する者であったもの
イ 日本国との平和条約の規定に基づき平和条約発効日において日本の国籍を離脱した者
ロ 平和条約発効日までに死亡し又は当該出生の時後平和条約発効日までに日本の国籍を喪失した者であって、当該死亡又は喪失がなかったとしたならば日本国との平和条約の規定に基づき平和条約発効日において日本の国籍を離脱したこととなるもの
2 この法律において「平和条約国籍離脱者の子孫」とは、平和条約国籍離脱者の直系卑属として本邦で出生しその後引き続き本邦に在留する者で、次の各号の一に該当するものをいう。
(1)平和条約国籍離脱者の子
(2)前号に掲げる者のほか、当該在留する者から当該平和条約国籍離脱者の孫にさかのほるすべての世代の者(当該在留する者が当該平和条約国籍離脱者の孫であるときは、当該孫。以下この号において同じ。)について、その父又は母が、平和条約国籍離脱者の直系卑属として本邦で出生し、その後当該世代の者の出生の時(当該出生前に死亡したときは、当該死亡の時)まで引き続き本邦に在留していた者であったもの
(法定特別永住者)
【第3条】 平和条約国籍離脱者又は平和条約国籍離脱者の子孫でこの法律の施行の際次の各号の一に該当しているものは、この法律に定める特別永住者として、本邦で永住することができる。
1.次のいずれかに該当する者
(イ)附則第10条の規定による改正前のポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年法律第126号)(以下「旧昭和27年法律第126号」という。)第2条第6項の規定により在留する者
(ロ)附則第6条の規定による廃止前の日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(昭和40年法律第146号)(以下「旧日韓特別法」という。)に基づく永住の許可を受けている者
(ハ)附則第7条の規定による改正前の入管法(以下「旧人管法」という。)別表第2の上欄の永住者の在留資格をもって在留する者
2.旧入管法別表第2の上欄の平和条約関連国籍離脱者の子の在留資格をもって在留する者
(特別永住許可)
【第4条】 平和条約国籍離脱者の子孫で出生その他の事由により入管法第3章に規定する上陸の手続を経ることなく本邦に在留することとなるものは、法務大臣の許可を受けて、この法律に定める特別永住者として、本邦で永住することができる。
2 法務大臣は、前項に規定する者が、当該出生その他の事由が生じた日から60日以内に同項の許可の申請をしたときは、これを許可するものとする。
3 第1項の許可の申請は、居住地の市町村(東京都の特別区の存する区域及び地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市にあっては、区。以下同じ。)の事務所に自ら出頭し、当該市町村の長に、法務省令で定めるところにより、特別永住許可申請書その他の書類及び写真を提出して行わなければならない。ただし、16歳に満たない者については、写真を提出することを要しない。
4 16歳に満たない者についての第1項の許可の申請は、親権を行う者又は未成年後見人が代わってしなければならない。
5 第3項の場合において、申請をしようとする者が疾病その他身体の故障により出頭することができないときは、法務省令で定めるところにより、代理人を出頭させることができる。
6 市町村の長は、第3項の書類及び写真の提出があったときは、第1項の許可を受けようとする者が申請に係る居住地に居住しているかどうか、及び提出された書類の成立が真正であるかどうかを審査した上、これらの書類(法務省令で定める書類を除く。)及び写真を、法務大臣に送付しなければならない。
【第5条】 平和条約国籍離脱者又は平和条約国籍離脱者の子孫で入管法別表第2の上欄の在留資格(永住者の在留資格を除く。)をもって在留するものは、法務大臣の許可を受けて、この法律に定める特別永住者として、本邦で永住することができる。
2 法務大臣は、前項に規定する者が同項の許可の申請をしたときは、これを許可するものとする。この場合において、当該許可を受けた者に係る在留資格及び在留期間の決定は、その効力を失う。
3 第1項の許可の申請は、地方入国管理局に自ら出頭し、法務省令で定めるところにより、特別永住許可申請書その他の書類を提出して行わなければならない。
4 前条第4項及び第5項の規定は、前項の申請について準用する。
(特別永住許可書の交付)
【第6条】 法務大臣は、第4条の許可をする場合には、特別永住者として本邦で永住することを許可する旨を記載した書面(以下「特別永住許可書」という。)を、市町村の長を経由して、交付するものとする。
2 法務大臣は、前条の許可をする場合には、入国審査官に、特別永住許可書を交付させるものとする。
(上陸のための審査の特例)
【第7条】 入管法第26条第1項の規定により再入国の許可を受けて上陸する特別永住者に関しては、入管法第7条第1項中「第1号及び第4号」とあるのは、「第1号」とする。
(在留できる期間等の特例)
【第8条】 第4条第1項に規定する者に関しては、入管法第22条の2第1項中「60日」とあるのは「60日(その末日が地方自治法第4条の2第1項の地方公共団体の休日に当たるときは、地方公共団体の休日の翌日までの期間)」と、入管法第7条第8号中「第22条の2第4項において準用する第22条第2項及び第3項の規定」とあるのは「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法第4条第2項及び第6条第1項の規定」とする。
(退去強制の特例)
【第9条】 特別永住者については、入管法第24条の規定による退去強制は、その者が次の各号の一に該当する場合に限って、することができる。
(1)刑法第2編第2章又は第3章に規定する罪により禁錮以上の刑に処せられた者。ただし、執行猶予の言渡しを受けた者及び同法第77条第1項第3号の罪により刑に処せられた者を除く。
(2)刑法第2編第4章に規定する罪により禁錮以上の刑に処せられた者
(3)外国の元首、外交使節又はその公館に対する犯罪行為により禁錮以上の刑に処せられた者で、法務大臣においてその犯罪行為により日本国の外交上の重大な利益が害されたと認定したもの
(4)無期又は7年を超える懲役又は禁錮に処せられた者で、法務大臣においてその犯罪行為により日本国の重大な利益が害されたと認定したもの
2 法務大臣は、前項第3号の認定をしようとするときは、あらかじめ外務大臣と協議しなければならない。
3 特別永住者に関しては、入管法第27条、第31条第3項、第39条第1項、第43条第1項、第47条第1項、第48条第6項、第49条第4項及び第62条第1項中「第24条各号」とあり、入管法第45条第1項中「退去強制対象者(第24条各号のいずれかに該当し、かつ、出国命令対象者に該当しない外国人をいう。)」とあり、並びに入管法第47条第3項、第55条の2第4項及び第63条第1項中「退去強制対象者」とあるのは、「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法第9条第1項各号」とする。
(再入国の許可の有効期間の特例等)
【第10条】 特別永住者に関しては、入管法第26条第3項中「3年」とあるのは「4年」と、同条第4項中「4年」とあるのは「5年」とする。
2 法務大臣は、特別永住者に対する入管法第26条の規定の適用に当たっては、特別永住者の本邦における生活の安定に資するとのこの法律の趣旨を尊重するものとする。
(事務の区分)
【第10条の2】 第4条第3項及び第6項並びに第6条第1項の規定により市町村が処理することとされている事務は、地方自治法第2条第9項第1号に規定する第1号法定受託事務とする。
(省令への委任)
この法律の実施のための手続その他その執行について必要な事項は、法務省令で定める。