菅インターナショナルオフィス
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1.難民認定制度とは
難民認定制度とは、難民認定申請を行った外国人が、法務大臣から難民認定を受けることができた場合に、難民条約に規定する難民として保護を受けることができる制度をいいます(入管法61条の2)。
ここで難民とは、人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者であって、国籍国の保護を受けることができないか、またはそれを望まない者をいいます(難民の地位に関する条約第1条、難民の地位に関する議定書第1条)。
2.難民認定を受けた外国人が享受できるもの
(1) 永住許可要件の一部緩和
日本に在留する外国人が永住許可を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
@ 素行が善良であること
A 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
※難民認定を受けて在留する外国人は、Aの要件を満たさなくても、法務大臣の裁量により永住許可を受けることができます(入管法61条の2の11)。
(2) 難民旅行証明書
難民認定を受けた外国人が外国旅行をするときは、難民旅行証明書の交付を受けます。難民旅行証明書に記載されている有効期間内であれば、何回でも日本から出国し、入国することができます(入管法61条の2の12)。
(3) 難民条約に定める各種の権利
難民認定を受けた外国人は、原則として締約国の国民または一般外国人と同様に扱われ、国民年金、児童扶養手当、福祉手当などを受けることができます。
3.難民認定申請手続
(1) 申請期間
制限なし
(2) 申請場所
申請者の住所または現在地を管轄する入国管理局
(3) 提出書類
@ 難民認定申請書
A 難民であることを証明する資料
B 写真
(4) 提示書類
@ 旅券または在留資格証明書
A 外国人登録証明書(所持している場合)
B 仮上陸の許可、乗員上陸の許可、緊急上陸の許可、遭難による上陸の許可、一時庇護のための上陸の許可を受けている外国人は、その許可書
C 仮放免中の外国人は、仮放免許可書
(5) 難民認定申請(法務省)
4.仮滞在許可
在留資格を取得していない外国人が難民認定申請をした場合は、その外国人が日本に上陸した日(日本にいる間に難民となる事由が生じた者は、その事実を知った日)から6か月以内に難民認定申請を行ったとき、または難民条約上の迫害を受けるおそれのあった領域から日本に入ったときなどの一定の要件を満たす場合には、日本に仮に滞在することが許可され、退去強制手続が停止されます(入管法61条の2の4)。
(1) 仮滞在期間及び期間の延長
仮滞在期間は原則として3か月で、期間の更新申請は許可期限の10日前から可能です。
(2) 仮滞在許可の条件
仮滞在許可を受けた者は、住居や行動範囲が制限され、就労も禁止されます。また、難民調査官から出頭要請があった場合は、指定された日時、場所に出頭して、難民認定手続に協力する必要があります。
(3) 仮滞在許可の取り消し
仮滞在許可を受けた者が条件に違反したとき、不正に難民認定を受ける目的で偽造または変造された資料を提出したとき、虚偽の陳述をしたときなどには、仮滞在許可が取り消されます(入管法61条の2の5)。
5.難民認定証明書
法務大臣が難民であると認定した外国人には、難民認定証明書が交付されます(入管法61条の2)。
6.在留資格に係る許可
難民認定された外国人が在留資格を取得していない場合は、日本に上陸した日から6か月以内に難民認定申請を行ったとき、または難民条約上の迫害を受けるおそれのある領域から日本に入ったときなど、一定の要件を満たす場合は、定住者の在留資格が付与されます。
また、これらの要件を満たさない場合でも、在留を特別に許可すべき事情があると認められる場合には、特別に在留を許可されることがあります(入管法61条の2の2)。
7.異議申立て
(1) 異議申立人
難民認定がされなかった外国人や、難民認定を取り消された外国人は、法務大臣に対して異議申立てをすることができます(入管法61条の2の9)。
(2) 異議申立期間
原則として難民認定をしない旨の通知、または難民認定を取り消した旨の通知を受けた日から7日以内
(3) 異議申立ての窓口
異議申立人の住所または現在地を管轄する入国管理局
(4) 異議申立てに必要な書類
@ 異議申立書
A 異議申立の理由を立証する資料
(5) 法務大臣の決定
法務大臣が、異議申立てに理由がある旨の決定をし、難民と認定された外国人には、難民認定証明書が交付されます。難民と認められた外国人が、一定の要件を満たす場合は、定住者の在留資格が与えられます。また、一定の要件を満たさない場合でも、在留を特別に許可すべき事情がある場合は、特別に在留を許可されることがあります。
8.難民認定者数等
(1) 2023年における難民認定者数等
2023年に日本において難民認定申請を行った者は13,823人で、前年に比べ10,051人増加。この中で難民認定をした者は303人、難民認定をしなかったが人道的理由から在留を認めた者は1,005人。
申請者の主な国籍は、スリランカ、トルコ、パキスタン、インド、カンボジア。
(2) 2022年における難民認定者数等
2022年に日本において難民認定申請を行った者は3,772人で、前年に比べ1,359人増加。この中で難民認定をした者は202人、難民認定をしなかったが人道的理由から在留を認めた者は1,760人。
申請者の主な国籍は、カンボジア、スリランカ、トルコ、ミャンマー、パキスタン。
(3) 2021年における難民認定者数等
2021年に日本において難民認定申請を行った者は2,413人で、前年に比べ1,523人減少。この中で難民認定をした者は74人、難民認定をしなかったが人道的理由から在留を認めた者は580人。
申請者の主な国籍は、ミャンマー、トルコ、カンボジア、スリランカ、パキスタン。
(4) 2020年における難民認定者数等
2020年に日本において難民認定申請を行った者は3,936人で、前年に比べ6,439人減少。この中で難民認定をした者は47人、難民認定をしなかったが人道的理由から在留を認めた者は44人。
申請者の主な国籍は、トルコ、ミャンマー、ネパール、カンボジア、スリランカ。
(5) 2019年における難民認定者数等
2019年に日本において難民認定申請を行った者は10,375人で、前年に比べて118人減少。この中で難民認定をした者は44人。難民認定をしなかったが人道的理由から在留を認めた者は37人。
申請者の主な国籍は、スリランカ、トルコ、カンボジア、ネパール、パキスタン。
(6) 2018年における難民認定者数等
2018年に日本において難民認定申請を行った者は10,493人で、前年に比べて9,136人減少。この中で難民認定をした者は42人。難民認定をしなかったが人道的理由から在留を認めた者は40人。
申請者の主な国籍は、ネパール、スリランカ、カンボジア、フィリピン、パキスタン。
(7) 2017年における難民認定者数等
2017年に日本において難民認定申請を行った者は19,628人で、前年に比べて8,727人増加。この中で難民認定をした者は20人。難民認定をしなかったが人道的理由から在留を認めた者は45人。
認定者の主な国籍は、エジプト5人、シリア5人、アフガニスタン2人。
申請者の主な国籍は、フィリピン4,895人、ベトナム3,116人、スリランカ2,226人、インドネシア2,038人、ネパール1,450人、トルコ1,195人、ミャンマー962人、カンボジア772人、インド601人、パキスタン469人。
(8) 2016年における難民認定者数等
2016年に日本において難民認定申請を行った者は10,901人で、前年に比べて3,315人増加。この中で難民認定をした者は28人。難民認定をしなかったが人道的理由から在留を認めた者は97人。
認定者の主な国籍は、アフガニスタン7人,エチオピア4人,エリトリア3人,バングラデシュ2人。
申請者の主な国籍は、インドネシア1,829人、ネパール1,451人、フィリピン1,412人、トルコ1,143人、ベトナム1,072人。
(9) 2015年における難民認定者数等
2015年に日本において難民認定申請を行った者は7,586人で、前年に比べて2,586人増加。この中で難民認定をした者は27人。難民認定をしなかったが人道的理由から在留を認めた者は79人。
認定者の主な国籍は、アフガニスタン6人、シリア3人、エチオピア3人、スリランカ3人。 難民認定しなかったが人道的理由から在留を認めた者の主な国籍は、ミャンマー12人、トルコ9人、パキスタン7人、シリア6人、バングラデシュ6人。
申請者の主な国籍は、ネパール1,768人、インドネシア969人、トルコ926人、ミャンマー808人、ベトナム572人。
(10) 2014年における難民認定者数等
2014年に日本において難民認定申請を行った者は5,000人で、前年に比べて1,740人増加。この中で難民認定をした者は11人。難民認定をしなかったが人道的理由から在留を認めた者は110人。庇護を与えた者は、ミャンマー人が全体の約39%を占める。
申請者の主な国籍は、ネパール1,293人、トルコ845人、スリランカ485人、ミャンマー434人、ベトナム294人。
(11) 2013年における難民認定者数等
2013年に日本において難民認定申請を行った者は3,260人で、前年に比べて715人増加。この中で難民認定をした者は6人。難民認定をしなかったが人道的理由から在留を認めた者は151人。庇護を与えた者は、ミャンマー人が81人で全体の約52%を占める。
申請者の主な国籍は、トルコ658人、ネパール544人、ミャンマー380人、スリランカ345人、パキスタン241人。
9.トピックス (川口市及び蕨市内に在住のトルコ人)
川口市及び蕨市内には多数のトルコ人が住んでおり、このトルコ人の大多数はクルド人です。
クルド人とは、トルコ、イラク、イラン、シリアの山岳地域に住む民族で、人口は2,500〜3,000万人といわれています。
川口市及び蕨市には、トルコ国籍のクルド人が2,000人以上、住んでいるといわれています。特に、川口市芝や前川周辺に多数暮らしています。そして、蕨市周辺に住むクルド人は、ワラビスタンとも呼ばれています。
川口市及び蕨市内に住むトルコ国籍のクルド人は、在留資格を有してなく、難民申請中で仮滞在の人が多数います。しかし、難民認定されることは、とても難しいのが現状です。難民に該当しない人の申請が多く、また、日本とトルコの友好関係を考慮しているとも言われています。
また、就労目的の留学生が、ビザ更新することができなかった場合に、継続して滞在するために難民申請をするというケースもよくあります。
このため、2018年1月から、難民申請6か月後の就労許可を廃止するととともに、書面審査で就労目的とみられる申請者を選別し、これまで一律に認めてきた在留や就労を大幅に制限することにしました。
すなわち、難民申請後2か月以内に、申請者を@難民の可能性が高い人、A明らかに難民に該当しない人、B再申請を繰り返している人、Cその他に分類し、@については速やかに就労を許可する一方、ABCについては原則として就労不可とし、在留期限終了後に新たな在留資格を付与しないことにしました。
また、今までは難民申請中の外国人については強制送還を停止していましたが、2024年6月10日施行の改正法では、難民申請の悪用を防ぐため、3回目以降の申請者は相当の理由が示されない限り強制送還されるようになります。
■参考資料
(1) 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
(2) 難民認定基準ハンドブック(UNHCR編集)
(3) 難民条約(外務省)
(4) 難民認定実務マニュアル(現代人文社)
(5) 難民判例集(現代人文社)
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